企業やお店の宣伝担当の方であれば、チラシやパンフレットそしてホームページなどの制作を一度はデザイナーに依頼したことがあるのではないでしょうか。
そしてデザイナーとやりとりする中、思い描いていたものと違うものができてしまって、制作会社やデザイナーと揉めてしまったことがありませんか?
多くの方が関わる大きな案件については様々なケースがありますので、今回は依頼者とデザイナー1対1のケースで考えてみようと思います。
不満に感じるのはお互いの認識の不一致
お互いよく知れた仲でもない限り認識の違いは少なかれ出てきます。そのため最初に案件を進めるにあたり、双方でその認識の違いを埋めることが必要です。
この部分をおろそかにしたまま案件が進んでしまうと、いざ満足いかない結果になってしまったときに、依頼者としては「なんて雑な仕事なんだ」とイライラしてしまうことでしょうし、デザイナーとしては「業務外のことまで手をかけたのになんて依頼者はなんて傲慢なんだ」と不満を募らせてしまうかもしれません。
認識の差を埋めるためにすること
認識を埋めるために4つのポイントを抑えておくと良いと思います。
- 目的を共有する
- 規定や制作のルールを共有する
- デザイナーの対応範囲を確認する
- 対話ができる関係を築く
目的を共有する
依頼者はまず、何のためにこのデザインを作るのかを明確にして共有することが重要です。その理由は2つあります。
デザインに対して正当な評価をするため
依頼者は上がってきたデザインに対して良し悪しをジャッジをしますよね。このときは必ず、目的を達成しうるデザインかどうかで評価することが重要です。チェックする人が複数いる場合も目的さえブレなければ、個人的な感性が入り込みにくく、建設的な話になりやすいです。
しかし、目的がぼやけていたり途中でブレたりすると見るタイミングで評価が変わりますし、他の人にチェックしてもらったときもその人の感覚(場合によっては好みじゃないというだけ理由もあります)でNGが出てくることもあります。
これではデザインがまとまることはなくデザイナーも意欲がそがれますし、デザインも目的達成のためではなく、依頼者のOKをもらうためだけにデザインをすることになりますので、期待を超えるデザインは出てこない可能性が高いです。
デザイナーに目的意識をもってデザインしてもらう
優秀なデザイナーはデザインするにあたって、自身の知見をもとに目的に合わせた提案を考えてくれます。またその部分をやりがいとしているデザイナーもいます。また依頼者による具体的な指示があった場合でも、より良いよい改善案を出してくれることもあるかもしれません。
ただし、ここは後述する依頼者とデザイナーが対等に話ができる関係であることが前提になります。
制作のルールを共有する
抑えておくべきポイントは以下のとおりです。
- 案件ごとに個別に押さえておくポイント
- 法律及び社会・業界のルール
- 会社の規定
ただし参入障壁の高い複雑なルールがある業界などは大抵の場合、専門の制作会社やデザイナーがいるため改めて確認する事が少なくてすみます。なので一般的にはそこに依頼するケースが多いと思います。
注意する必要があるのは、明らかに専門でない会社やデザイナーがデザインをする時です。この場合は依頼者としてはルールを提示または確認を促した方がベターです。またデザイナーからも依頼者に確認をすべきでしょう。
案件ごとに個別に押さえておくポイント
案件ごとに個別に押さえておくポイントがある場合は必ず共有します。
印刷物には印刷の都合によるものもありますし、郵便物などでは郵便局向けの表記が必要になり、バーコードが必要な場合もあります。どちらの責ということではありませんが、一般的には印刷をデザイナーで行う場合はデザイナーが確認。印刷を依頼者が直接行う場合は依頼者が確認した上でデザイナーに伝達すべきでしょう。
法律及び社会・業界のルール
不動産の広告を例にすると公正取引協議会による不動産広告ルールがありますし、また加盟団体などの表記をする場合にも独自の規定があるケースがあるので必ず確認すべきでしょう。その他、商品パッケージには多岐にわたるルールがありますのでこの辺りも共通認識が必要です。
会社の規定
ここではコーポレートカラーや会社や商品・ブランドロゴの取り扱いなどが当たります。その他、会社のブランド維持のために広告ルールを定めているケースもありますのでここは依頼者でしっかりデザイナーに伝える必要があります。
デザイナーの対応範囲を確認する
デザイナーと言ってもそのスタンスは様々で、コンサルのように依頼者の相談にのって提案したり、キャッチコピー制作・素材のレタッチ作業を行うデザイナーもいれば、制作イメージ・テキストや写真素材がそろった状態であくまでレイアウト設計だけを行うデザイナーもいます。
技術的な面と予算的な面がありますので、発注する前にお互いに確認しておく必要があります。 技術的に難しいと判断した場合は会社や担当を変えるしかないかもしれません。
予算の話であれば、依頼者はデザイナーに対し見合った予算を立てておくことが望ましいのですが、デザイン料は最初から明示されることがあまりなく、出てきた金額が割高に感じることもあると思います。
しかしデザイナーからすると大抵の場合、作業に入ってから依頼者から出てくるであろう要求があり、それを見越した上で見積もってしまうとどうしてもギリギリの金額では出しづらいものです。
(フリーランスの場合など、自身の市場価値維持の可能性もありますが)
そのため依頼者は、可能な限り求める条件を契約前に提示するようにするとデザイナーとしても具体的な金額を出しやすくなります。
よくデザイナーと揉めたみたいな話は、この条件が曖昧なまま進めているケースが多いように思います。
対話ができる関係を築く
請負業務においては『下請け』という言葉が示すように商慣習として依頼者の立場が強くなりがちで、やむを得ない面はあります。しかし依頼者として、信頼関係を築くためにも一方的な要求や話を聞かないといった姿勢は避けた方がベターです。
先述したデザイナーの目的意識のケースでいうと、せっかく色々な試行錯誤を経て提案しても、話を聞いてくれない人によほどの状況でない限り、話をしたくなくなってしまいます。
こうした事が続くと多くのデザイナーは提案する意味を感じなくなり、できるだけ会話を避けるために依頼者の言いなりになるロボットに徹してしまうでしょう。
まとめ
細かいことを書いてきましたが、同じ目的を共有した上で依頼者とデザイナーがお互いをパートナーとして尊重して進行できるといい方向に進みやすいです。結果、信頼関係が生まれデザインもいいものになっていくでしょう。