一般の消費者にとって金額の大きい不動産取引は、一生のうちに経験することが少なく、知識や情報はどうしても不動産会社優位になりがちです。その消費者の不利な立場を是正するために、不動産取引には様々なルールが課せられています。
もちろん広告も例外でなく、不動産公正取引協議会によって規約として厳格なルールが定められています。
ただその規約は内容はかなり細かいため、不動産業界の人でも把握出来ていない方がいるほど複雑です。
規約違反は最悪の場合、免許の取り消しも・・・・
チラシやホームページ等で広告の規約違反をしてしまうと厳重警告や違約金、広告事前審査を課せられるだけでなく、最悪の場合は宅建業者としての免許を取り消されてしまう可能性もあります。
知らずに使ってしまっても、広告主として責任は免れることができない為、印刷する前によく確認し、防いでいくことが重要です。
今回は、特に見落とされがちな禁止用語にフォーカスしてそのルールを一部ご紹介します。
禁止用語の使用
不動産公正取引委員会、一定の用語について以下のように定めています。
事業者は(中略)それぞれ当該表示内容を裏付ける合理的な根拠を示す資料を現に有している場合を除き、当該用語を使用してはならない。この場合において、第4号及び第5号に定める用語については、当該表示内容の根拠となる事実を併せて表示する場合に限り使用することができる。
不動産公正取引協議会連合会HP – 第7章 特定用語等の使用基準より
「根拠となる事実と併せて」とありますので、全く使用してはいけないということではなく、正しく根拠が示されていれば使用出来るということです。ここで根拠を示すことができれば、他の物件と比較しても実際に優位であると言えますので、消費者に訴える強い訴求ポイントになります。
では、それぞれの項目を具体的に解説していきます。
全く欠けている点がないことを意味する言葉(完全表現)
この場合は、どんなに優良な物件であっても、その基準は人によって評価が分かれますので、全ての人にとっての100%の物件というものはあり得ません。そのため、このワードを物件に使用することは事実上NGになります。
但し、「完全を目指して」「完全を追求して」といった、努力目標としての表現は許容範囲とされています。
用語例
- 完全
- 完璧
- 絶対
- 万全
- 申し分ない
- 理想
- パーフェクト
他社より優位に立つことを意味する言葉(優位表現)
このケースの場合はその優位性が実証できれば使用できますが、その実証には第三者機関の調査や行政による統計データなどの客観的な情報に基づく必要があります。身内・関係者などの主観的な情報では認められません。一般的には、出典・調査会社・調査年月などを注釈によって補足します。
用語例
- 日本一
- 日本初
- 業界一
- 超
- 当社だけ
- 他に類を見ない
- 人気No.1
- 抜群
一定の基準を満たし、選別されたことを意味する言葉(選別表現)
このケースは、事実に反して使用することはできません。一定の基準により選別したという事実がないにも関わらず、「特選」、「厳選」等と表示する場合のほか、その基準自体が物件の優良性を裏付けることができる程度の合理性がない基準により選別した場合も含まれます。何気なく特別感を出すために「特選・厳選」は使用してしまいがちですが、規約違反となってしまいます。
掲載する場合は以下のように何を基準に選定したかの明確な表記が必要になります。
【特選物件】
※掲載した物件は「最寄り駅まで徒歩5分以内」「専有面積100㎡以上」の
条件を満たしたものをピックアップしています。
用語例
- 特選
- 厳選
- 正統
- 正統派
- 由緒正しい
著しく安いという印象を与える言葉(割安表現)
不動産価格は一般的に市場によって決定されるので、他よりも安いということは原則的にありえません。相場よりも安いのには何かしらの理由があり、その利用も併せて考えると適正価格になる場合がほとんどです。このような考え方から、割安を示唆する表現はNGです。
また売主直取引で仲介手数料がかからないといったメリットを謳う場合も、お買い時という表記ではなく、あくまでその事実を訴求します。(例:売主の為、仲介手数料不要です)など。
用語例
- お買い得
- 掘り出し
- 格安
- 投げ売り
- 破格
- バーゲンセール
当然のことを強調する表示(当然なことの強調表現)
不動産を販売する際に、取引のする上で必要なこと、当然なことをあたかも後付けしたように強調することによって他物件よりも優れているように誤解させることは禁止されています。
- 定期借地権を利用したので価格が安くなりました。
→定期借地権は土地購入代金が含まれないため、購入する場合より安くなります。 - 当社の戸建住宅は建築確認を受けています。
→建築確認を受けていない建物は建築できません。 - 当社は手付金等の担保措置を講じています。
→宅建業者は手付金の担保措置を義務付けられています。
このように取引上必要なものや当たり前の内容を、独自に設けたサービスのようにすることは規約違反となってしまいます。
写真
不動産広告で写真は、消費者が具体的にイメージをしやすいため、訴求効果は大きいです。見栄えをよくするため、写真の撮り方や色の補正などを行いますが、ここでも注意が必要になります。具体的には下記のような加工は、公取規約に違反する恐れがありますので要注意です。
- 物件からの景観を実際のものよりも優れているように誤認する写真、絵、CGの表示
- 海から離れた物件を販売する際に海外の海のイメージ写真をイメージとして使用
- 現地から離れている商業施設の写真を付近の施設であるかのように使用
- 物件近くに高速道路があるのに、この部分を削除した
特に嫌悪施設(騒音のある工場や霊園、風俗営業施設など)や電柱・鉄塔などを消すことは、規約に反するだけでなく、消費者とのトラブルを招く恐れがありますので注意が必要です。
まとめ
知らずのうちにやってしまいそうなものを中心に紹介しましたがいかがでしたでしょうか。
今回紹介したもの以外にもたくさんのルールがあります。規約は首都圏不動産公正取引協議会のホームページに全て掲載されていますので、だれでも閲覧が可能です。もし今回の内容を知らなかった場合は、時間がある時に公取規約を一度を目を通してみてはいかがでしょうか。